日銀の金融政策を理解するのに最低限必要な債券の知識(超基礎編①)

当初はわかりやすさが売りだった黒田総裁の金融政策。

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今や金利や債券の基礎がわかってないと全然理解できない複雑なものになってしまいました。

そこで金融の世界に入ってから債券畑が長い僕が日銀の金融政策を理解するために最低限必要な金利・債券の基礎知識について解説したいと思います。

今回の投稿ではまず超基礎編①ということで、債券の価格と利回りの関係、そしていわゆる金利と呼ばれるものが日本国債の売買によって決定される理由について解説したいと思います。

んなことくらいわかってる、って方は読み飛ばしてください。この後の超基礎編②ではイールドカーブって何なのか、どうやって使うのかってところを解説します。

債券ってなに?

金利を理解するにはまず債券って何なのか、というのを理解する必要があります。

債券って何でしょうか?

よく例えとして出されるのが借金の借用証書です。

お金の貸し借りをするときに貸した、借りたということを証明する紙のことですね。

で、その借用証書である債券。その中でもっとも世の中に出回っており、メジャーなものが国債と呼ばれる、政府がお金を借りるときに発行する債券です。

国債で例えれば、日本国政府が借金をする際に国債という借用証書を発行します。

そこには「10年後に借りたお金を返すよ。それまで毎年借りたお金の1%を利子として支払うよ。by 日本国政府」

と書いてあるわけです。

この借用証書、売買することが可能で、Aさんが当初日本国政府にお金を貸した人だとすると、Aさんはこの借用証書(国債)をBさんに売却することができます。

するとお金を借りている日本国政府はBさんにお金を返すことになるんです。

債券の価格が上がると利回りは下がる

そして、AさんとBさんが取引する際のこの借用証書(国債)の価値は市場の需要と供給によって決まります。

唐突ですが、国債の値段は1単位100円で発行されます。つまり先ほどの例でいけば、日本国政府は1単位100円でお金を借りて、年間1%、つまり1円をお金を貸してくれた人に支払うわけです。

先ほど出てきたAさんとBさんが取引をする際にも基本的にはこの100円を基準として取引されます。

Aさんがこの借用証書(国債)を保有して1年、日本国政府がお金を返済する期日まであと9年となった時にAさんは現金が必要になったので、この借用証書を売却することにしました。

Aさんは「101円で売りたい!」と言いました。

対して、

Bさんは「100円で買いたい!」

Cさんは「100円50銭なら買ってもいいよ。」

でもBさんはどうしてもその借用証書(国債)が欲しい。なので結局・・・

Bさん「しょうがない。101円で買うよ!」

こうしてAさんとBさんの間で取引が成立します。

さてさて、ここで株や為替なんかの運用商品とは異なる利回りという概念が出てきます。

債券を売買する人たちというのは安定的に運用したい人が多いので、どちらかと言えばその値動きで収益を得ようというよりも、債券を保有することでどれくらいの利息が手に入るかを重視します。

Aさんが日本国政府にお金を貸した際、その借用証書(国債)は100円で年1%、つまり1円の利息が支払われるという約束でお金の貸し借りが行われました。

ということは100円投資したら10年間、年1円の利息が支払われる。1円÷100円=0.01=1%、利回り1%ということになります。

Bさんは101円でその借用証書(国債)を買いました。日本政府が元本を返してくれるまであと9年、毎年1円ずつ支払いがあります。

利回りはいくらになるでしょうか?1円÷101円=約0.0099=約0.99%?惜しいんですが違います。

忘れちゃいけないのが買った値段。101円で買ってますよね?

対して、9年後に日本国政府が返してくれるお金は100円です。AさんとBさんがいくらで取引をしようが、日本国政府にとっちゃどーでもいい話です。100円借りたから100円返す。それだけです。

ということはBさんは101円でその借用証書(国債)を手に入れましたが、日本国政府が9年後に支払ってくれるのは100円なので、9年間かけて1円損してしまうことになります。

利回りの計算にはこれも加味してあげなくてはいけません。

そこで毎年支払われる利息から1年間に損する1円÷9を引いた金額、つまり1円-1円÷9=約0.88円がBさんがこの借用証書(国債)を保有した際の利益になります。

101円で購入したので、約0.88円÷101円=約0.87%というのがBさんが買った借用証書(国債)の利回りです。

長くなってしまいました・・・

ちょっとまとめると、Aさんは価格100円、利回り1%で日本国政府が発行した債券を買いました。Bさんにこれを売却したとき、価格101円、利回りは約0.87%でした。

ここで覚えておいてほしい重要なこと。上記のように債券は価格が上がると利回りが下がる、ってことです。

そしてもう一つ。債券は利回りで取引されます。

先ほど「○円で買いたい!」、「○円で売りたい!」なんて風に書きました。便宜的にそうしましたが、本当は「○%で買いたい!」、「○%で売りたい」となります。

金利ってなに?

ここまで結構長々と説明してきましたが、ようやく言いたかったことが言えます。

世間でよく言われる「金利」という言葉。日銀はこの「金利」のコントロールをせっせと頑張ってます。

金利ってなんでしょう?おそらくすぐに思い浮かぶのが、利子とか利息って言葉だと思います。

で、利子、利息、金利・・・

まーだいたい同じようなもんです。

もう少し踏み込むと、金利ってのは「時間をお金で換算したもの」です。

やさしく言うと金利は一定時間の間、お金が使えない状態をガマンしたことに対するごほうびのようなものです。

DさんがEさんに1年間100万円を貸すという状況を想像してください。

この状況は言い換えるとDさんが1年間そのお金を使えなくなるわけです。Dさんは1年間、そのお金が使えないという状況をガマンしなきゃいけません。タダで貸すわけにはいきませんよね。

そこで1年間という時間をお金に換算するといくらになるのか、それが金利です。

日本国債の利回りが金利のスタンダード

ただ、DさんとEさんがお金の貸し借りをした場合、そこで発生する金利は純粋に時間をお金で換算したもの、とは言えません。

Eさんはもしかしたらその借金を踏み倒すかもしれません。途中で会社をクビになって返せなくなるかもしれません。なのでDさんはきっと時間をお金で換算したものよりいくらか多めにの支払いを要求するはずです。

このいくらか多めに発生する支払い、これはお金の借り手の信用によって変動するはずです。

Eさんが資産何十億もある大金持ちの息子だった場合と年金暮らしの両親を養ってる中堅企業のサラリーマンだった場合を想像してもらえれば理解頂けるかと思います。

では純粋に時間をお金で換算したものというのはどのようにして導き出されるでしょうか。

それが日本国債の利回りなんです。(やや唐突で無理やり感がありますが・・・)

さきほどのDさん、Eさんの話ではEさんの借り手としての信用が影響して純粋な時間をお金に換算したものがどれほどになるのかよくわからない、ということでした。

じゃぁ信用が一番高い、ほとんど返済が滞るリスクがない借り手って誰でしょうか。

日本円で貸し借りが行われる世界において、もっとも信用のある借り手、それって日本国政府ですよね。

なので、日本国政府が借金したときに支払われる金利、つまり日本国債の利回りが純粋に時間をお金に換算したもの、と言えるのです。

まとめ

債券は買われると価格が上昇し、利回りが下がる。売られると価格が下落し、利回りが上がる。

日本国債の利回りが金利のスタンダードである。

とりあえずここまでを理解頂けたら、次にイールドカーブってなんなのか、どうやって利用するのか、を知って頂きます。超基礎編②にお進みください。

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2016年10月5日 日銀の金融政策を理解するのに最低限必要な債券の知識(超基礎編①) はコメントを受け付けていません。 トピックス