さて、日銀の金融政策を理解するのに最低限必要な債券の知識、第2弾ではイールドカーブについて解説していきます。。
黒田日銀は先日の金融政策決定会合にて「イールドカーブ・コントロール」という手法を導入しており、現在の金融政策を理解するうえでイールドカーブという概念がとても重要になっています。
今回の投稿ではイールドカーブって何なのか、何に使うのかを解説します。
イールドカーブなんて知ってるよ、わかってるよ、という方はこの記事を読み飛ばしていただいて結構です。
イールドカーブ以前に、債券ってなに?金利ってなに?って方は超基礎編①をご覧ください。
イールドカーブってなに?
金利とは日本国債の利回りのことである、と言いました。先に出てきたように日本国債の利回り(価格)というのは市場で取引され、需要と供給によって変動するとも言いました。
日本国政府は毎月何兆円もの日本国債を発行します。返済までの期間(残存期間といいます)に応じて2年国債、5年国債、10年国債、20年国債、30年国債が毎月発行され、40年国債が3ヶ月に一回発行されます。
当たり前ですが、10年国債は発行されて1年経つと残存9年の国債です。
過去に発行された国債をかき集めると残存期間が数日後というものから40年までほぼ空白期間を作ることなく幅広い銘柄が存在します。その数なんと400銘柄弱。
これらの銘柄について残存期間と利回りの関係をプロットしたものがイールドカーブと呼ばれるものになります。日経新聞では横文字を使ってわかりにくさを避けたいのか、利回り曲線と表現されたりします。
イールドカーブを見れば債券市場が一度に見渡せる
このイールドカーブの何が便利なのか?
考えてみて下さい。日経平均株価は225銘柄で構成されています。その瞬間、瞬間において225銘柄すべての値動きを把握することが可能でしょうか?無理ですよね。225銘柄の騰落を一覧表示したところで、その情報を把握するには少々時間がかかってしまいます。
日本国債のマーケットの場合、それが可能なんです。イールドカーブというたった一本の曲線の動きを見るだけで、残存期間に応じた債券の価値の変化を把握することができます。
イールドカーブの形状変化を表す専門用語
そのイールドカーブの動きを見る上で知っておかなければいけない専門用語について解説します。
これを知っておけば債券関連の専門的なニュースやレポートを読んだときの理解がぐっと深まると思います。
まず、債券価格の動きとして大前提だった債券は価格が上昇すると、金利は低下する、という原則を思い出してください。
債券の価値がどう変化したのかを把握する場合、例えば昨日から今日にかけての変化を知りたい、と思ったとすると、まず、昨日のイールドカーブと今日のイールドカーブを重ね合わせます。するとどの年限の利回りが上がったのか、下がったのか、その変化幅はどのくらいか、という情報が一目でわかります。
この時、全体的に昨日のイールドカーブに比べて利回りが低下していて(債券価格が上昇していて)、さらにカーブの左側(残存年数が短い方)よりも右側(残存年数が長い)の方が大きく利回りが低下(債券価格が上昇)しているようなとき、これをブルフラットしているといいます。
マーケットを語るときにブル、ベアという言葉を聞いたことがあるかもしれません。英語でブルは牛、ベアは熊のことです。ブル相場というと上昇相場、ベア相場というと下落相場のことを表します。諸説あるらしいですが、僕は「牛が攻撃するときは角で下から上に突き上げる。」「熊が攻撃するときは爪で上から下に振り降ろす。」からこう表現するんだ、と教わりました。
フラットというのは平らな、という意味ですね。
併せて考えるとブルフラットというのは相場が上昇する(利回りが低下する)中でカーブが平たくなることをいいます。
フラットの反対はスティープです。スティープというのは急な、という意味ですね。
ブル相場で考えると、カーブの左側(残存が短い)より右側(残存が長い)方が利回りの低下幅が小さい場合がスティープしている状態です。
これらをまとめると、
- ブルフラット→短期金利より長期金利が大きく低下
- ブルスティープ→長期金利より短期金利が大きく低下
- ベアフラット→短期金利の方が長期金利より大きく上昇
- ベアスティープ→長期金利の方が短期金利より大きく上昇
という風にパターンわけできます。
ちなみに常に短期金利と長期金利は同じ方向に動くわけではありません。
短期金利と長期金利が逆に動くことをツイストするといい、
- ツイストフラット→短期金利が上昇、長期金利が低下
- ツイストスティープ→短期金利が低下、長期金利が上昇
と表現されます。
以上がイールドカーブの形状変化を表す専門用語でした。
まとめ
さて、債券の基礎の基礎を2回に分けてざっくりと説明させて頂きました。
最後に超基礎編①、②をざっくりとおさらいしたいと思います。
- 債券は借用証書。お金を貸し借りする際に借り手と貸し手の間で交わされる契約書です。
- 普通、借り手は貸し手に対してお金を返済するまでの間、定期的に利息を支払い続けます。
- そしてこの契約書は売買が可能です。売買が成立すると借り手は新しい貸し手に利息を支払い、最終的に借りたお金を返済します。
- 慣習として債券は利回りで売買されます。
- 金利とはお金の使用をガマンすることに対して支払われる対価です。
- 純粋なガマンの対価としての金利を導き出すためには、最も信用のある借り手である日本国政府が支払う金利を参照すべきです。ですので、金利=日本国債の利回りとなります。
- 債券の利回り変化を確認するためにイールドカーブがあります。
- イールドカーブを使うと債券の全銘柄の価値の変化を一目で理解することができます。
- 相場の方向(ブル、ベア、ツイスト)と長短金利の関係(フラット、スティープ)でイールドカーブの変化を6通りの言い方で表現することができます。
と、こんな感じです。
- 債券は買われると価格が上昇し、利回りが下がる。売られると価格が下落し、利回りが上がる。
- 一般的に金利と呼ばれるものが市場における日本国債の売買によって決定されること、そしてその値動きはイールドカーブの形状変化に反映されること。
超基礎編ではこの2つの事項を理解頂ければ結構です。
次は実際に日銀の金融政策をここまで説明してきた債券・金利の基礎知識を使って解説していきたいと思います。