日銀が導入した新しい金融緩和の枠組みをわかりやすく解説します

もうサプライズはない、と言われていた日銀が見事にサプライズ緩和を打ちだしました。

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緩和内容はかなりわかりにくいものなので、できる限り簡単に解説してみたいと思います。

「総括的な検証」の結果

まず、日銀が前回の会合でやると言っていた「総括的な検証」の結果ですが、事前に報道されていた内容と大きく外れたものではありませんでした。要するに、

  • これまでやってきた金融緩和はきちんと機能してデフレではなくなった。
  • でも物価上昇率2%の目標は達成できなかった。これは原油価格の下落、消費増税、新興国経済の減速による。
  • これまでやってきた金融緩和は長期的な人々の期待に働きかけるもので、いったん期待が剥がれてしまうとなかなか修復できない。
  • マイナス金利と国債買い入れは金利低下に大きく貢献したが、金融仲介機能に不安がひろがるなど、デメリットもあった。

というものでした。

簡単に言うと、

これまでやってきたことは間違ってなかったけど、外部要因に水を差された。そのせいで一度膨らんだ期待が萎んでしまった。ちなみにマイナス金利導入は副作用もあった。

というような内容でした。

追加緩和の内容:「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の解説

今回の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」にはこれまでの金融緩和策に2つの新たな方策が取り入れられました。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)

まず、これまでの国債買い入れオペに加えて、指値型の買い入れオペを追加します。

従来は市場参加者の提示した価格のうち、安い価格から日銀が事前に提示した量を買う、というものでした。要は市場の言い値で日銀が買ってくれるわけです。

新型の買い入れオペでは日銀が「この値段なら買うよ。」という風に日銀の言い値で市場から国債を買うことになります。

そのため、金利が大きく上して国債の値段が下がっても、日銀が適切と思う水準で国債を買ってくれます。

さらに、従来の国債買い入れオペは買い入れ平均年限のルールが撤廃され、都度買い入れ金額が変更されるので、これを利用すれば日銀が金利が高いと思った年限は買い入れ金額を増やし、金利が低いと思った年限は買い入れ金額を減らす、という風にすれば年限ごとの国債価格をコントロールできます。

日銀が適切と思うイールドカーブの形状、水準に対して、金利上昇方向でカーブが動けば新型オペ、金利低下方向でカーブが動けば従来オペを使って、イールドカーブの形状をコントロールするわけです。

こうすることで従来から言われていた、カーブがフラットニングしすぎて、年金、生保が苦しい、という状況を回避できます。

オーバーシュート型コミットメント

次にオーバーシュート型コミットメントです。

これは「総括的検証」の結果のところで書いたように、日銀としてはやり方は間違ってなかったけど、、水を差した奴がいたせいで、せっかく膨れ上がった期待が萎んでしまったというスタンスでいるわけです。

なので萎んだ期待を再び膨らませるためにはちょっと大げさにやった方がいい、と日銀は結論付けました。

これまで日銀が金融緩和を推し進める前提としていた「マネタリーベースの拡大」、つまりいろんな資産を買い入れて、世の中に出回るお金をじゃぶじゃぶ増やせば、お金が足りないところにもしっかりお金が行き届き、経済が好循環サイクルに入れば、結果物価が上昇する、という考え方だったわけで、これをもっと大げさにやろう、と言っているのです。

そこで日銀はこれまでマネタリーベースの拡大ペースを年80兆円としていましたが、この上限を撤廃し、2%の物価上昇という目標が達成されるまでは際限なしにやるよ、という決意を表明したのです。

↑黒田総裁の話を聞いていると、減額もありうる、ということなので、単純に拡大ペースを拡大させるだけではなく、状況によっては縮小することもあり得るようです。黒田総裁はテーパリングではない、と言っていますが、そうとられてもおかしくない措置ですね。

「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入によるマーケットインパクト

それではこうした追加緩和措置を受けてマーケットはどう動くのでしょうか。

まず、今日のマーケットの反応ですが、マイナス金利の深掘りが予想されていた分、中短期の金利が上昇、これが米金利の上昇にも波及し日米金利差が拡大、円安が進みました。

さらにマイナス金利の深掘りがなかったことで銀行株が6~7%と大幅に上昇し、株高をけん引しました。

つまり円安株高債券安と完全にリスクオンの展開です。

ただ、株を押し上げた要因である銀行株の上昇と円安のうち、円安についてはこのまま持続するものなのかやや不安が残ります。

マーケットが引けてみると日米金利の居所もやや落ち着いて、金利差もほぼ元の水準まで縮小しました。なのでドル円の位置は株の上昇だけで引き上げられているだけとなっています。

一方、銀行株の上昇ですが、日銀は何もマイナス金利の深掘りはもうやらない、と言ってるわけではありません。なので、15時半から始まる黒田総裁の記者会見を機にすべてが元に戻る、ってことも警戒しておいた方がいいと思います。

僕はその可能性が高いと考えています。というか今回の政策変更をもって、ある意味マイナス金利の深掘りを除いて弾は打ち尽くしてしまった可能性があり、黒田総裁からはマイナス金利の深掘り余地について言及があるのではないかと考えています。

ですので、株、為替に関しては今晩のFOMCを経てFedが予想通り利上げを見送った場合、休みが明けた時には結局同じ位置に戻っている、という方向で見ています。

債券市場についてはこれからの日銀と市場の対話が重要であり、毎回のオペをこなすことで、日銀が適切と見るイールドカーブの水準を推測していく必要があります。なので、円債市場の方向性についてはちょっと不透明感が残ることになります。

 

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2016年9月21日 日銀が導入した新しい金融緩和の枠組みをわかりやすく解説します はコメントを受け付けていません。 トピックス