日銀が7/29の会合で追加緩和する理由、しない理由を考えてみた

今週木曜日、金曜日で開かれる日銀の金融政策決定会合。毎度のことながら、追加緩和実施の有無について市場では様々な憶測が飛び交っています。

日銀は今回、追加緩和を行うんでしょうか?追加緩和する理由、しない理由を考えてみました。

日銀が追加緩和しない理由

やっても市場が思い通りに反応しない

日銀は直接的に意図してはいないとはいえ、追加緩和を通じて国債やETFの購入によって世の中にお金を流し込み、間接的に為替を円安方向への誘導を試みてきました。

最初の2回の追加緩和についてはその目論見通り相応の効果を発揮しましたが、3回目にマイナス金利導入と共に打ち出された際にはむしろ円高株安を招いてしまい、タイミング悪く原油安や中国経済への不安、その後のBrexitなどのイベントも重なってアベノミクスの効果がすべて剥げ落ちてしまうほどにリスク資産の価格は下落してしまいました。

マイナス金利の導入は金利を商売のネタにしている銀行の収益に直接的に悪影響を及ぼすとして、これまでに導入された緩和策と違い、ネガティブインパクトに注目が当たっており、これ以上日銀がマイナス金利を深堀りした場合、銀行株の下落を伴って円高株安がさらに進行することが考えられます。

つまり日銀が追加緩和を行っても、その内容次第では市場が期待するような効果が得られない可能性があるのです。これについては日銀も危惧しているところでしょうし、それでも緩和を打たなければならないような切羽詰まった状況にあるとは思えません。

Brexit後、マーケットは落ち着きを取り戻している

英国のEU離脱が決まった際、よく引き合いに出されたのがあのリーマンショックです。グローバルに景気後退を引き起こしうるイベントだと誰もが身構えました。

しかし、実際フタを開けてみると英国はすぐに離脱を宣言するでもなく、数年単位で離脱に向けて動いていくということが明らかとなり、離脱の影響がどのように波及していくのか、よくわからない状況になってしまいました。

一方で各国中銀が一段とハト派的な金融政策をとる、との期待が芽生え、ほとんどのリスク資産が離脱決定前の水準に戻したほか、米国などは株価が史上最高値を更新しているような状況です。

そんな中、離脱決定後にBOE、ECBはそれぞれが開催した会合で緩和姿勢は示しつつも、いったんは様子見するというスタンスを示しました。

これは英国のEU離脱の影響を見極めたい、という意図からくるものです。確かに英国がEU離脱を決めたとはいえ、まだ具体的なアクションは一切起こしておらず、経済への影響も表面化していません。むしろ株価などの指標は上昇基調にあり、一見するとBrexitなんてなかったかのようです。そんな中で各国中銀としても無駄玉は打ちたくないわけです。

さて、そんな中で日銀はどんな理由で追加緩和を打つつもりなんでしょうか?

日銀が追加緩和する理由

物価が思ったように上がらない

日銀はそもそも物価2%という目標を掲げて緩和策を実施しています。当初2年で達成するということでスタートしたわけですが、未だ達成される兆しがありません。

おそらく日銀が今回の会合で追加緩和を行う場合、この物価目標を達成するため、という理由で追加緩和を行うものと思われます。というかそれ以外に表立った理由はありません。

ただ、消費者物価指数(CPI)は足許伸びるどころか下降傾向にあります。それは前回会合の時も同じです。

となると、前回は緩和しなかったのに、今回はやる、という理由が欲しいところです。

原油価格は足許落ち着いてきていますし、外部要因に理由を見つけようにも上記のようにまだBrexitの影響は表面化してません。

ありえるとしたら「予防的措置」という位置付けでしょうか。

政府の経済対策発表と一緒のタイミングでやりたい

金融政策と経済政策をセットで披露する。ヘリコプターマネーもどきのような政策。

少し前まで本物のヘリコプターマネーが期待されていたことを考えるとどこまでアナウンス効果があるのかわかりませんが、政府としてやりたがっているのは間違いないと思います。

これを実現するためには政府と日銀がどこまで連携して話を進められるか、ということになりますが、黒田総裁がヘリマネ議論を否定する際に説明していたように、中央銀行の独立性という問題がありますし、日銀が再三財政規律を政府に求めていたにも関わらず、消費増税を先送りしてしまった政府と日銀の間にどこまでの信頼感が醸成されているのかはイマイチよくわかりません。

 

で、やるの?やらないの?

というわけで結論。日銀は7月29日の金融政策決定会合で追加緩和を実施しない、と予想します。

日銀にとって追加緩和という実弾はあと何回も打てるものではありません。そんな中で上に挙げたように今、やらなければいけない理由というのがあまりにも弱すぎる上、政府と日銀の連携が密にとれているという前提に立たないと成り立たないものです。

ただ、英国のEU離脱の時と同じく、こうした類の議論というのはほぼギャンブルに近い、というか、結果を言い当てるのはほぼ無理です。

そうした不透明感が強いリスクイベントに対して、どのようにポジションを取るべきかを別の機会で考えてみたいと思います。

2016年7月26日 日銀が7/29の会合で追加緩和する理由、しない理由を考えてみた はコメントを受け付けていません。 トピックス